論文概要: 世界保健機構の最新報告では現在世界中に4億2000万人の糖尿病患者がおり2030年までに5億5200万人まで増加すると推定している。現在、年間460万人が糖尿病で死亡している。
米国の統計によると現在2910万人の糖尿病患者がいると推定され、米国民の9.3%が該当する。更に、上記の内の810万人については糖尿病という診断がなされていないのが現状である。
糖尿病は体全体に影響を及ぼす病気で心臓疾患、脳卒中、失明、腎臓不全などの深刻な合併症を引き起こす。糖尿病にはⅠ型とⅡ型があるが成人が発病する90-95%はⅡ型糖尿病であるので本論文ではⅡ型糖尿病か否かの診断と、その診断理由を解り易いIf-Thenルールの形式で導いている。本研究で扱っているⅡ型糖尿病データベースにはヘモグロビンA1c (HbA1c)の項目がないため、日米の学会で多用されているHbA1cによる基準が用いることができない。また、空腹時血糖(FPG)も入力項目にない。
一方で伝統的な経口ブドウ糖負荷試験2時間値(OGTT)とBMIはデータベースの入力にあるのでⅡ型糖尿病であるか、否かについて判定し説明するルールを抽出したところ、日本糖尿病学会で定める境界型糖尿病を早期に発見する興味深い知見を得た。
一般的にはHbA1cでⅡ型糖尿病であるか否かが判断できると考えられているが、HbA1cだけでは境界型糖尿病患者を見逃している事を指摘する学術論文も多い。事実、境界型糖尿病を判別するガイドラインは日米の学会にはない。また、OGTTあるいはBMIの値が糖尿病の有無を判定するのに有効であるという論文もある事から本論文のⅡ型糖尿病のデータベースからのルール抽出は全く同じアルゴリズムをHbA1c, FPGを含んだ大規模な糖尿病データベースに適用してビッグデータ解析を行い潜在的に多数いる境界型糖尿病患者の早期発見、予防、栄養管理指導に繋がり重点慢性疾患の一つである糖尿病対策の新しい方策として有望であると考えられる。
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